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「アジア」と「ローカル」に、次の100年のカギがある/表輝幸(株式会社ルミネ 代表取締役社長)インタビュー

「アジア」と「ローカル」に、次の100年のカギがある/表輝幸(株式会社ルミネ 代表取締役社長)インタビュー

2024年8月26日(月)、シンガポールの中心にあるラッフルズシティ・ショッピングセンターに、ルミネのグローバル旗艦店「ルミネシンガポール」がオープンした。株式会社ルミネの表輝幸社長に、アジア市場が持つポテンシャル、日本の地方(ローカル)文化の海外発信など、次の100年を見据えた同社のビジョンについて聞いた。

By AAJ Editorial Team

ルミネシンガポールのオープンに合わせて店内で行われたファッションショー。

海外マーケットでも支持を集める「ルミネのスタイル」

8月26日にルミネシンガポールがオープンしました。 現地での反応、手応えはいかがですか?

 おかげさまで、私たちの予想をはるかに上回る盛況で、年齢や性別、国籍などを超えて幅広い方々にご利用いただいています。オープン後も、SNSなどを通じた口コミで評判が広がり、日を追うごとに売り上げが伸びている状況です。

現地の関係者やブランド企業の皆さんも非常に喜んでくれています。今回、ブルーボトルコーヒーは東南アジア初上陸ですし、ユナイテッドアローズ、トゥモローランド、ビームスといったブランドも、ルミネシンガポールへの出店を機に、彼らの想像を超えるお客さまの支持を集めています。

この背景には、「the Life Value Presenter お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」というルミネの理念が強く反映されていると感じています。単に「お客さまが欲しいものを提供する」だけのショップではなく、お客さまの潜在的なニーズを見極めて“道案内”をし、「ファッションを通じて新たな人生の扉を開いてみませんか?」と語りかける……こうしたルミネの接客スタイルが、海外のお客さまにも支持された結果と言えるのではないでしょうか。

アジアを起点に、世界中の人々の「Life Value」を向上させる

ルミネのグローバル旗艦店として、シンガポール、とりわけラッフルズシティを選ばれた理由は、どんなところにあるのでしょうか?

 シンガポールは、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が毎年発表する「世界競争力ランキング」の2024年版で第1位の国です。海外からの観光客を数多く受け入れる一方で、シンガポールの人たちも購買力があり、新たなトレンドを貪欲に追い求め、海外からの商品やサービスなど、良いものはどんどん取り入れている。こうしたマーケットにルミネが進出していくことは、今後の世界展開を考える上でも大きな意義があると思っています。

ラッフルズシティ・ショッピングセンターは、シンガポールのビジネス街の中心に位置する商業・ホテル・コンベンションセンターからなる複合施設で、観光客やオフィスワーカー、さらにはローカルの人々も多く集うエリアです。そのグランドフロアは、いわば「ラッフルズシティの顔」ともいえる場所。ここに出店することによって、日本とローカルのファッション、ライフスタイルを融合した、多様性あふれるライフバリューを提案し、ルミネならではの新たなコミュニティを構築し、ここからアジア全域、ひいては世界へと発信しようと考えたのです。

グローバル旗艦店ルミネシンガポールのオープンに際してスピーチする表社長。

ルミネシンガポールは、今後を見据える中で、どんな役割を果たしていく店舗となるのでしょうか?

 私は、大きく3つの役割があると思っています。第一は、ファッションやカルチャー、ライフスタイルにおける「日本ならではの価値を発信する役割」です。日本の魅力は、まだまだ海外の方々に十分に伝わっているとは言えません。私たち自身も「日本の良さ」をしっかり認識し、この店を通じて発信、提案していきたいと思っています。

第二は、「現地のニーズやマーケットの情報を収集する場」としての役割です。私たちが「これが日本ならではの価値だ」と思う商品を、そのまま海外の店舗に並べても、マーケットのニーズが異なるため、現地のお客さまには受け入れられません。
この店では、提案した商品に対するお客さまの反応を観察しながら、「もっとこうした方が、現地のお客さまに好まれるのでは」といった改善ポイントを発見し、次の商品開発にフィードバックする役割を担っているのです。

そして第三は、「シンガポールからアジア全域に向けて、新たな価値を発信していく」という役割です。ルミネが日本の価値と、海外の良いものを融合させながら、アジア全域に新たなライフスタイルを提案し、文化、価値を発信する……こうした取り組みを通じて、成長著しいアジアの需要を取り込み、グローバル市場の中で評価される企業を目指します。

表社長とルミネシンガポールのスタッフ。

想定を超える反響を呼んだルミネシンガポールの店内。

グローバル人材の育成と地方創生

シンガポールへ、日本のショップスタッフを連れていったそうですが、人材研修を海外で行う意義について教えてください。

 ルミネでは、ルミネ理念を実践し、お客さまに新たなライフバリューを提案するおもてなしのスペシャリストを「ルミネスト」として認定しています。「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」の3つのグレードに認定しているのですが、今回、ゴールドに認定されたショップスタッフを対象に、ルミネシンガポールで「ルミネゴールドアカデミー」を行いました。

ルミネストゴールドの皆さんは、スキルや知識、経験が豊富なことはもちろんですが、何よりすばらしい感性を持っています。その感性をさらに磨くためには、世界中のさまざまな場所で、「感動体験」することが欠かせません。

シンガポールでぜひ体験してもらいたいのは「多様性」です。例えば、シンガポールは他民族・多言語社会ですから、多くの情報がピクトグラム表示になっています。また、食の分野では、ベジタリアンやヴィーガン、ハラル対応など、お客さまのニーズに合わせたきめ細かなサービスが、当たり前のように提供されています。よく「日本のおもてなしは世界一」と言われますが、このような側面では、日本はまだまだ遅れています。

今回、彼らはグローバルな体験を通じて、自分たちの強みを知るとともに、自分たちに何が足りないのかに気づき、「もっと自分たちの接客を磨き上げなければ」という危機感も抱いたと思います。スタッフ一人ひとりが海外の空気を肌で感じ、感動を体験することによって、お客さまに最高の感動を提供できる人になってほしいと思っています。

おもてなしのスペシャリスト「ルミネストゴールド」を対象とした研修が7月22日~26日にシンガポールで実施された。

今回、ルミネシンガポールのポップアップストアとして福井県の物産を展開されたそうですが、その狙いはどんなところにあるのでしょうか?

 日本各地には、農産物や伝統工芸品など、すばらしいプロダクトが数多くあります。ルミネは、こうした商品を世界に向けて発信するサポートをしています。

今回は、「FUKUI UPDATED CRAFTS STAND」と題して、越前和紙、越前焼、越前打刃物など、福井の伝統工芸品にデザイン性とストーリー性を加えた商品を展示・販売するフェアを開催しました。開催にあたっては、ルミネシンガポールのスタッフが事前に福井を訪問し、ものづくりの現場を視察しています。現代の生活に合わせて使いやすくアップデートされた福井の伝統工芸品を、ルミネのグローバルな視点で再編集してシンガポールの方々に届けることで、「モノを起点としたインバウンド促進」にもつなげていこうという狙いです。

日本の伝統工芸品が、世界の市場で求められる魅力的な商品になれば、当然、高価格で販売することができます。そうなれば、地域の若い人たちが後継者として集まり、伝統的なものづくりを新たな視点で考えるようになるでしょう。そして、「こんな風に表現し、デザインし、伝えることによって、高い値段でも買っていただける」という実績を示し続けることができれば、他の都道府県の人たちも、「自分たちもチャレンジしてみたい!」という意欲が湧いてくると思うのです。こうした活動を地道に続けていくことによって、日本の元気に繋げていきたいと思っています。そして、今後も「お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」ことに挑戦し続けて参ります。

ポップアップストアでは、「FUKUI UPDATED CRAFTS STAND」という福井県産のプロダクト販売が行われた。

【Profile】
表 輝幸(おもて・てるゆき)株式会社ルミネ 代表取締役社長

1988年、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に入社。ホテル、住宅、新規事業開発等に従事。2000年、株式会社日本レストラン調理センター社長にグループ最年少で就任。その後、株式会社日本ばし大増、株式会社紀ノ国屋のM&Aを手掛け、東京駅グランスタ開発等を牽引。JR東日本事業創造本部 開発・地域活性化部門長を経て、株式会社ルミネ常務取締役、専務取締役を歴任。2015年にJR東日本に戻り、2016年に執行役員事業創造本部副本部長に就任、「生活サービス10年ビジョン」を策定。2021年に常務執行役員就任、2022年、常務執行役員マーケティング本部副本部長として「Beyond Stations構想」や「品川開発プロジェクト」などを推進。2023年6月、株式会社ルミネ代表取締役社長に就任。

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